2022年大学入試共通テスト「生物」第1問(計12点)問題、解答、解説

解説

問1

手には、親指がほかの指と独立に働く、拇指(拇指)対向性がある。×
→樹上生活をする霊長類は「木の枝やものをつかむ」ために親指(母指)が他の指に向かいあうように発達した「母指対向性」が発達した。手(前肢)の母指対向性は、直立二足歩行に伴う変化ではなく、霊長類の初期から引き継いだ変化。逆に足(後肢)の指の母指対向性は、他の霊長類では持ち続けている(後肢の指でも木の枝につかまりぶらさがることができる)のに対し、直立二足歩行した人の足(後肢)では、母指対向性は消失した。

大後頭孔が頭骨の底面に位置し、真下を藻いている。
眼が前方についている。×
霊長類は、木の枝を伝わって移動するためには、距離感を把握しなければならず、両目の視野を重ね合わせて前方を立体視するため両目が顔の前面に位置するようになった。よって直立二足歩行に伴う変化ではなく、樹上生活に伴う変化。
骨盤は幅が広く、上下に短くなっている。〇(直立二足歩行する時、上半身の体重を支えるために変化した。)

 

よって答は(4点)。

<サルとヒトの頭骨などの比較>

 

問2

同じ遺伝子Aから作られるタンパク質におけるアミノ酸配列の違いは、種が近い(種が分岐した年代が新しい)ほど小さい。その原則を知っていれば、表より、チンパンジーとゴリラが最も近く(分岐年代が新しく)、次にオランウータン、そして最も離れているのがニホンザルなのでが正解。分岐年代の比までわかる正確な系統樹の描き方は以下の図の1~9の手順になる。理解しておいてほしい。(4点)

問3

分子系統樹を作る時は、タンパク質のアミノ酸配列(あるいはDNAやRNAの塩基配列)の相違数が分岐年代に比例すると考えるので、ヒトーチンパンジー間のアミノ酸配列の相違をx(%)とすると、
1.93:x=1300万:600万
1.93:x=13:6
13x=6×1.93
13x=11.58
x=11.58/13=0.89(%)

遺伝的浮動により、ヒトの集団内で、突然変異によって遺伝子Aに生じた新たな対立遺伝子の頻度が上がったため。×
→同じタンパク質を決める遺伝子に関する遺伝的浮動ならば、どの種でも同じようにおきると考えられる。
ヒトにおいて生存のためのタンパク質Aの重要度が上がり、タンパク質Aの機能に重要なアミノ酸の数が増えたことで、突然変異によりタンパク質Aの機能を損ないやすくなったたね。
→遺伝的な変化がオランウータンーチンパンジー間からの予測よりも少なくなったということは、ヒトにおいて、そのタンパク質の重要度が増し、変化すると生存に不利で淘汰され、変化が少ない個体が生き残っていったと考えられる。
医療の発達により、ヒトでは突然変異によってタンパク質Aの機能を損なっても、生存に影響しにくくなったから。×
→医療の発達は近年のことであり、ヒトの遺伝子構成を変化し集団内に定着させるほどの時間はたっていない。
よって、(4点)。