2020年大学入試センター「生物」第5問(進化と系統・配点18点)問題・解答・解説


解説

問1解説

生存や繁殖に影響しない突然変異は、主にア(遺伝的浮動)によって集団中に広まる。このような過程を経てb突然変異が蓄積していく。種間でみられる塩基配列の違いの多くは、生存や繁殖にイ(影響しない)突然変異に由来している。また、種間の塩基配列の違いは、共通の祖先から分岐した後に長い時間が経過しているほどウ(大きい)という傾向がある。よって、(2点)

図で、進化における遺伝的浮動の重要性を提唱した木村資生の中立説を説明しよう。

 

遺伝子X~Zについて、突然変異が起きた場合に個体の生存や繁殖に有害な作用が起きる確率の大小関係として最も適当なものを次ののうちから一つ選べ。

 

ダーウィンが提唱しその後の様々な生物学者が補強していった自然選択説によれば、生存や繁殖に有利な突然変異は集団内に広まり、不利な突然変異は排除されていく。しかし、実際にDNA(ウイルスではRNAもあり)の塩基配列の変異を調べると、生存や繁殖に影響しない(有利でも不利でもない)中立的な変異が多い。その役割に注目したのが木村資生の中立説である。中立的な突然変異は偶然によって徐々に集団全体に広まることがある。特に、なんらかの原因(たとえば地理的隔離)で集団の個体数が一時的に小さくなると、その特に生き残っていた中で頻度が高い遺伝子がその後集団全体に広がることがある。図では黒・赤混在していた集団が、減少期を経て赤が多い集団に変化した(つまり赤が集団全体に広まった)モデルを示している。このような効果を「びん首効果」「創始者効果」という。

問2解説

次の5条件が成り立つ集団をメンデル集団という。
1、集団がある程度大きい(遺伝的浮動の影響が少ない)。
2、交配がランダムに起きる(いくつかの集団に分かれていない)。
3、突然変異が起きない。
4、個体の移出入がない。
5、自然選択がはたらかない(遺伝子によって生存に有利・不利がない)。

メンデル集団においては、集団内の遺伝子頻度は何世代を経ても変わらない。それは以下のように数学的に証明できる。

実際に、地球の長い歴史の中では1~5の条件のどれかが成り立たなくなり、遺伝子頻度が変化し、それが進化につながる。しかし、短期的な生物集団の遺伝子頻度の把握にはハーディ・ワインベルグの法則が有効である。
遺伝子型頻度は上図で赤のように表現できる。これは中学数学での(p+q)2を展開した各項である。Wの遺伝子頻度は0.8なので、wの遺伝子頻度は0.2になる。上図でp=0.8、q=0.2ということになる。
したがってWWはp2=0.82=0.64(64%)、Wwは2pq=2×0.8×0.2=0.32(32%)、wwはq2=0.22=0.04(4%)。よって(3点)

問3解説

塩基配列を様々な動物種の間で比較し、非同義置換の率と同義置換の率を計算した結果が表1である。

同義置換とはある塩基が別の塩基に置換され変化してもコドンの3塩基目の置換などアミノ酸を変化させない置換であり、アミノ酸が変化しないのでタンパク質の構造も変えず生存や繁殖に有害でない。非同義置換とはある塩基が別の塩基に置換された場合に、コドンの指定するアミノ酸が変化し、タンパク質の構造を変化させる可能性がある。そのアミノ酸の変化がタンパク質に立体構造を大きな変化につながる位置だったり酵素の活性中心だった場合に生存や繁殖に有害である可能性がある。一方アミノ酸が変化しても、生存や繁殖に有害ではない(影響がない)可能性もある。非同義置換がどれぐらい生存や繁殖に有害か、影響がないかは、遺伝子の種類(タンパク質の種類)によっても異なる。
置換全体に占める非同義置換の比率は以下のように、遺伝子Y(30%)>遺伝子Z(17%)>遺伝子X(0%)となる。

非同義置換が多くても、その遺伝子が様々な動物種の中に保有され続けているということは、それが生存や繁殖に有害ではなかったからであり、一方、非同義置換が様々な動物種の中に存在しないということは、それが生存や繁殖に有害だから生存できなかったと考えられる。したがって遺伝子における非同義置換の比率が少ないほど、その遺伝子の突然変異が生存や繁殖により有害である。
よって有害な作用が起きる確率は、非同義置換の比率順の逆で、Y<Z<X。(4点)。

問4解説

はギンゴケ共通祖先をもつのでコケ植物と予測でき、選択肢の中ではゼニゴケ。共通祖先からの分岐の根元が4.2憶年前であり、植物の陸上進出の時期と一致する(動物(両生類)の陸上進出は3.5億年前)。
は1億年前にハスと共通祖先を持ち、1億年前(中生代)に分岐の根元があるので、中生代に出現し新生代に繁栄した被子植物と考えられ、選択肢の中ではアジサイ
は古生代(3.2億年前)に出現し中生代に繁栄した裸子植物であり、選択肢の中ではアカマツ。よって(3点)

以下に分類のまとめと地質時代のまとめを掲載する。


新生代・中生代繁栄生物の出現は一代前(但し、古生代繁栄生物は古生代に出現)。

問5解説

3億年前は中生代になる直前の古生代で石炭紀などシダ植物の大森林が形成されていた時期であるので、根や葉をもたない植物が多数とは考えにくい。
維管束を持ち陸上化し、まだ根・茎・葉が分化しないの植物のは陸上進出(4.2億年前)直後と考えられ、選択肢の中では(4億年前)(3点)

 

問6解説 

コケは維管束が発達せず、根・茎・葉の分化がなく、からだ全体で水を吸収する。(なお、根・茎・葉の分化があるシダ植物・種子植物など維管束植物では水の吸収は根であり、気孔は二酸化炭素の吸収と蒸散での水の排出なので、気孔も水を吸収する部位ではない。)

水を含む生物体の重量を「生重量」、水を除いた生物体の重量を「乾(燥)重量」という。
乾重量=生重量ー含水量、あるいは含水量=生重量ー乾重量

含水率(全体の重量に占める水分の割合)が8%なので、
含水量(8g)=生重量(100g)ー乾重量(92g)
乾重量は、十分な時間をかけて光合成などで有機物を合成しない限り不変なので、各時間での含水量・含水率は以下のようになる。


すると90分後には、含水率が60%を超えて生命活動を回復したと考えられる。よって、(3点)