共通テスト「生物」第2回試行調査第4問(個体群)(配点18点)問題・解答・解説

解説

問1

ℓxmx=ℓx(各年齢における生存率)×mx(その年齢での子を産んだ数)=各年齢ごと(親)に対する子どもの数の比を示す。
その合計値が1となっているということは、親世代と丁度同じ数も子が生まれるので、

(配点3点、正答率16.6%)

問2

pxは各年齢での1年間経ての生存率。つまり「1ーpx」は1年間経ての死亡率を示す。

0→1歳の時のみ 1ーpx=1-0.25=0.75
1→2歳、2→3歳、3→4歳、4→5歳は、いずれも1ーpx=1-約0.6=0.4
0→1歳が死亡率(個体数減少率)が高い。
1→2歳、2→3歳、3→4歳、4→5歳は死亡率が(0→1歳よりも)低くて一定。
5歳時点で5個体生存しているので、図は

1目盛りごとに10倍となるグラフは、急激な増加や減少を伴う個体群の個体数の変化などを示すのに適している。縦軸の目盛りの対数をとると、目盛りが均一にならぶこのようなグラフを、「片対数グラフ」という。「片対数グラフ」においては、同じ比率で増加・減少する部分は直線となる。

(配点3点、正答率30.8%)

問3

a、〇生息地が分割されれば、分割された各生息地は、分割前よりも、食料が少なく、生活空間が狭く環境収容力は減少する。
b、〇生息地が分割されれば、分割された各生息地ごとの捕食者数が分割前よりも少なくなる。
c、〇生息地が分割されれば、生育環境の多様性は減少する。たとえば、広大な草原内に沼がある地区と乾燥地がある地区を含む場合、分割されない状態ではリスは相互を往来できる。しかし、分割された場合、片方の環境にしか生息できなくなるので多様性は減少する。
よって(配点4点、正答率16.6%)

問4

近親交配に伴うℓxの上昇 ×
近親交配は「交配」して産む子どもには影響を及ぼすかもしれないが、親自身の生存率ℓxには影響を及ぼさない。

種間競争の緩和による競争排除の減少

もともと、競争排除(競争の末、片方の種が生存できず排除される)ような関係の種がいれば、大きな生息地においてもすでに競争的排除が起きていたはずなので、そもそもそのような関係の種の並存は考えにくい。また、(仮に種の並存があったとして)競争排除の減少がおきた場合、むしろ絶滅の可能性は低くなる。

共倒れ型の種内競争の激化
種内競争はその種にとって必要な資源(とくに食料)が限られているとき、同じ種の個体間で生き残りをめぐる競争が起きることである。そもそも大きな生息地にその種が生息していた以上、その中にある資源(とくに食料)の適した個体数があったと考えられる。分割された場合、資源と個体数は生息地ごとに均等に分配されると考えられ、急に個体数あたりの資源が不足し種内競争が激化するとは考えにくい。
(種内競争に様々な分類の基準がある。「勝ち抜き型」と「共倒れ型」もその一種である。「勝ち抜き型」は各個体の使う資源(とくに食料)の量が決まっており、10個体分の資源の所に、15個体いれば、5個体が死に10個体が生きる「勝ち残り型」種内競争である。「共倒れ型」は、たとえば密度効果で個体の大きさを小さくするなど各個体の使う資源量をコントロールでき、また産卵数調整などによる次世代の数の調整もできる。きる。たとえば10個体分の資源の所に15個体いれば、各個体を小型化し、15個体全部が生き残ろうとしながら、次世代の産卵数を低く抑えようとする。しかし、この調整がうまくいかない場合は、多くの個体が死ぬことになるので「共倒れ型」種内競争である。)

近親交配に伴うmxの低下 
個体数が減少すれば、近親交配が増え、子の平均数が減少することはありうる。
(近親交配では、雌の卵由来と雄の精子由来の相同染色体上の対立遺伝子が全く同じ遺伝子(ホモ)になることが多くなる。異なる遺伝子(ヘテロでは劣性の疾病遺伝子は対立遺伝子により発現が抑制されるが、ホモの場合疾病遺伝子が発現する。このような近親交配によるその種の生存率などの低下を「近交弱勢」という。これを避けるためにも、個体群は一定以上の個体数を持ち、遺伝的多様性が確保されるほうがよい。)

偶然に個体数がゼロになる確率の上昇 
小さな生息地になってしまた場合、個体数がゼロになる可能性はある。
(少数の個体数となった場合は、そもそも交配が十分できない可能性があることに加え、 の理由もあり、個体数の維持が困難になる。)

(配点4点、両方正答の場合のみ正答、正答率26.3%)

問5

 設問は「現れる可能性が最も低いものを、下のうちから一つ選べ。」である。実際の入試問題では赤字で強調してはないので、「最も高いものを選ぶ問題」と勘違いしないように、問題文の指示をしっかり読もう。(入試の設問には「正しいもの(可能性が高いもの)を選べ」が多いが「誤っているもの(可能性が低いもの)を選べ」もある。その場合、その部分に下線をひくクセをつけると間違いを回避できると思います。)

「この集団が多くの小集団に分断され、それ以降多くの世代が経過したとする。その時点で無作為に複数の小集団について調べたときに、各小集団の遺伝子型の構成」を問うている。「全ての小集団」ではなく「複数の小集団」であることに注意してほしい。「全ての小集団」と考えてしまうと、どこかの小集団の中には必ずGやCやSが含まれるため、選択肢のようにGとCだけ、ましてやのようにCだけになることはありえなくなってしまう。
もとの集団から無作為抽出で選んだ個体はG5個体、C5個体、S10個体であり、G:C:S=1:1:2で存在する。無作為抽出で20個体を選ぶのだから、もとの集団は20個体以上で、数百以上がある。それをいくつかの小集団に分割すると、G、C、Sの混在小集団のほかに、Gのみ、Cのみ、Sのみの個体が集まった小集団になることはありうる。すると、たまたま、Gのみ小集団が1小集団以上、Cのみ小集団が3集団以上でき、そこからGのみ小集団の子孫集団と、Cのみ小集団の子孫集団3個が選ばれれば、調べて表記されている4集団が のようになることはありうる。同様に、Cのみ小集団が4集団以上でき、そこからCのみ小集団の子孫集団4個が選ばれれば、調べて表記されている4集団が のようになることはありうる。

Gのみ小集団、Cのみ小集団は、子孫はずっとGのみ小集団、Cのみ小集団となる。しかし、S(G,C)のみ小集団は交配の第1代でS(G、C)だけでなくG(G、G)とC(C、C)も生じ、更にその子孫集団も混在集団となる。

は第1、4子孫小集団が混合集団由来、第2子孫小集団はCのみ小集団、第3子孫小集団はGのみ小集団由来と考えられる。
S、G、Cが混在した小集団の子孫集団はS、G、Cが混在する小集団となる。
 最初Sのみ集団があっても、1代目の子孫ですみやかにS、G、C混在集団となり、Sのみ集団がずっと維持されることは考えられないので
可能性が最も低いものは である。(配点4点、正答率23.4%)