大学入試共通テスト「生物」第2回試行調査第5問B(15点配点)問題・解答・解説

【解説】

問4

第5問Aの解説では、リガンドからDNAの転写調節までの上流の流れを中心に説明したが、ここでは下図でタンパク質の働き方の流れについて確認してみよう。

 

 

タンパク質合成を指定するmRNAは、その後のタンパク質の行先や働き方から3種類あると考えるとよい。
図で赤字1~3がそれを示す。
1、小胞体表面のリボソーム(リボソームが付いた小胞体を粗面小胞体という)に移動し、そこで翻訳され、合成されたタンパク質は小胞体内部に移行する。そして小胞体の簡単な糖鎖修飾など、更にゴルジ体に移行し、更に多い糖鎖修飾などがなされ、分泌顆粒を経て細胞外に分泌される。
2、細胞内の遊離リボソームでタンパク質に翻訳され、解糖系の酵素など細胞内で働くタンパク質となる。
3、ミトコンドリアなど他の細胞小器官に移行し、そこで働く。
1には合成されたタンパク質の一部に、小胞体移行シグナルペプチド、3には各細胞小器官ごとに特徴的な短いシグナルペプチド(アミノ酸いくつかの並び)があり、そのシグナルペプチドに応じた細胞小器官に移行し、移行後、そのシグナルペプチドは切断される。

よって、問4で聞いている細胞外に分泌されるALDHはの流れであるので、答は
(配点3点、正答率56.0%)

問5

ALDHでは表のように4個のポリペプチドの複合体であり、4個のうち3個が正常型で1個のみが変異型の場合でも活性は48%と半分以下になり、半分(4個の中の2個)が変異型になると活性は12%まで落ちる。
この活性の低下の理論をもう少し簡略に考えようとしたのが、本小問の2個のポリペプチドの問題である。

もっとも単純で、正常型と変異型が1:1(変異ポリペプチド50%)が混合している場合を考える。下の碁盤目表のように1個目・2個目が順にくっついたと考えてみると1個目のポリペプチドは正常型:変異型=1:1、同様に2個目のポリペプチドも正常型:変異型=1:1なので、2個のポリペプチドの組合せの比率は、
正常型ペア:正常型と変異型のペア:変異型ペア=1:2:1(25%:50%:25%)
正常型ペアのみが活性を持つという仮定なので、活性は25%となる。


この値を示しているのは図の中では、 である。(配点3点、正答率30.7%)

 

問6

酵素の中には正常型・変異型の組合せで表のような5タイプが混在する。したがって酵素の活性の値は、各タイプの活性×存在比の総和となる。宝くじを買った時、戻ってくるお金の期待値は、各等賞の賞金と存在比(あたる確率)の総和であることと同じである。(ちなみに1枚300円の年末ジャンボ宝くじの期待値は147円だそうである。宝くじは数学的にな「損」することが計算済でも「夢」を買うものということですね。)
この設問は、共通テストの特徴がよく表れているのでよく読んでほしい。ススムが本小問の
f「4本でもヘテロ接合体の活性は、半分になってしまう」と言っているのは、ススムなりの推論での計算であり、事実であるとは限らない。
その後、カヨが、正確な文献を見つけて表1を提示し、「ススムさんの計算は前提が違っている」という。そして本小問はf(ススムの推論による計算)の前提を問うているので、表1の酵素活性の事実は無視して、各選択肢の前提で計算して考える。ただ酵素活性の事実は無視するが存在比は活用する。(この存在比は数学の二項定理そのものである。)
つまり、共通テストは正しい答を見つけるだけでなく、間違っていたとしても、討議の過程の思考のプロセスを問うことがありうる。


正常型の本数に比例するとすると、各タイプの活性は以下のようになる。
正常型4個 100%、正常型3個 75%、正常型2個 50%、正常型1個 25%、正常型0個 0%
これに存在比をかけたもの総和は
100×(1/16)+75×(4/16)+50×(6/16)+25×(4/16)+0×(1/16)=50
活性が半分となるので、この計算の前提となりうる。

変異型の本数に反比例といっても、反比例の比例定数がわからないし、変異型が0のタイプは計算不能であるので、計算の前提になりえない。

「正常型が1本でも入ったら酵素活性100%」で計算してみると

100×(1/16)+100×(4/16)+100×(6/16)+100×(4/16)+0×(1/16)=93,25%
活性は半分とならない。


「変異型が1本でもあると酵素活性なし」で計算すると
100×(1/16)+0×(4/16)+0×(6/16)+0×(4/16)+0×(1/16)=6.75 %
活性は半分とならない。

変異型が複合体を構成しないと、正常型4個のみで酵素活性100%の酵素が必ず合成される。しかし、遺伝子から正常型のホモ接合体の場合と比較して、転写翻訳される正常型ポリペプチドの本数が半分であるため、複合体の量自体が半分となると考えることができ、1個1個の酵素の活性は100%だが、量が半分なので、ヘテロ型酵素全体の活性はホモ接合体の半分となる。よって前提と考えることができる。
よって、

(配点5点、正答率14.3%、片方のみ正解の場合2点、この部分正答率54.3%)

 

問7

「活性が高い」が正常型のホモ接合体を示し、「活性が低いかほとんどない」が変異型・正常型が混在するヘテロ型と、変異型ホモ接合体を示す。
正常型遺伝子をA、変異型遺伝子をaとし、遺伝子頻度をA:a=p:q(p+q=1)とすると
AA p2
Aa   2pq
aa   q2

160のうち90、つまり9/16がp

9/16=(3/4)

p=3/4 =0.75

q=1-0.75=0.25

(4点配点、正答率6.4%)