2021年大学入試共通テスト「生物」(第2日程)第5問「遺伝子間相互作用と分子進化」(配点12点)問題・解答・解説

2021年8月3日(火)午前1時完成・公開 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

2021年大学入試共通テスト「生物」(第2日程*)第5問「分子進化」(配点計12点)の問題・解答・解説です。

*コロナ対策などのため、2021年の共通テストは1月16・17日(第1日程)、1月30・31日(第2日程)の2回、受験の機会を設けた。

本解説は、オリンピック期間中の平日夜を活用して作成・公開しました。
●東京オリンピック開会にあたって(オリンピック期間中に朝倉ができる社会貢献は入試問題解答解説作成)(2021年7月22日(開会式前日)、船橋市議・予備校講師、朝倉幹晴)

 

2022年以降の共通テスト「生物」を受験する人を含む大学入試「生物」選択者、物理選択で大学に入り、大学で生物を学ぶ必要がでてきた方、生物学に関心のある市民の方々に、以下解答解説をお届けします。ご活用ください。入試問題は白黒ですが、イメージ補強のため一部カラー化しました。(また図は朝倉が模写しました。100%正確ではありませんが、問題を解くのに問題がないレベルに模写しています。)

 

センター生物(第2日程)第5問(配点計12点)

節足動物である昆虫のショウジョウバエにおいては、脚をつくる遺伝子Xが胸部体節(以下、ムネ)で発現するために脚が形成される。ショウジョウバエの腹部体節(以下、ハラ)で脚が形成されないのは、体節の特徴を決める調節遺伝子の一つであるホメオティック遺伝子Yが発現し、直接に遺伝子Xの転写を抑制することで、遺伝子Xが発現しないためである。他方、昆虫ではない節足動物であるアルテミアでは、遺伝子Yがムネで発現しているが、ムネの全てに脚がある。節足動物の進化における、遺伝子Yの働きと脚形成との関係を調べるため、ショウジョウバエとアルテミア(図1)の遺伝子Yに関して、実験1・実験2を行った。
実験1:アルテミアの遺伝子Yをショウジョウバエのからだ全体で強制的に発現させたところ、遺伝子Xの発現は変化せず、ムネでは発現したままで、ハラでは発現しなかった。このことから、アルテミアの遺伝子Yは脚形成を抑制しないと考えられる。
問1、 ショウジョウバエの遺伝子Yを、実験1と同様に、ショウジョウバエのからだ全体で強制的に発現させたときに期待される遺伝子Xの発現の仕方として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
ムネでは発現せず、ハラでは発現する。
ムネでは発現せず、ハラでは発現しない。
ムネでは発現し、ハラでも発現する。
ムネでは発現し、ハラでは発現しない。
実験2 遺伝子Yからはタンパク質Yがつくられる。ショウジョウバエのタンパク質Yとアルテミアのタンパク質Yとの違いを調べるため、図2のように、それぞれの正常なタンパク質Y、領域Bをもたない変異タンパク質Y(変異タンパク質aおよびb)、およびショウジョウバエとアルテミアのタンパク質Yの間で領域Aと領域Bの組合せを変えた変異タンパク質Y(変異タンパク質cおよびd)の遺伝子をつくった。それぞれの遺伝子を実験1と同様に、ショウジョウバエのからだ全体で強制的に発現させて脚形成に対する影響を調べたところ、図2の結果が得られた。なお、調節タンパク質として働くためには、領域Aが必要である。
問2、 実験2の結果から導かれる考察として誤っているものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
ショウジョウバエのタンパク質Yの領域Aは、脚形成を抑制する。
アルテミアのタンパク質Yの領域Aは、脚形成を抑制する。
ショウジョウバエのタンパク質Yの領域Bは、領域Aの働きを阻害する。
アルテミアのタンパク質Yの領域Bは、領域Aの働きを阻害する。
問3、 図3はショウジョウバエ、アルテミア、およびムカデの系統樹である。ムカデでは、脚が形成される体節で遺伝子Yが発現していることが分かっている。このことをふまえ、実験1・実験2の結果から導かれる考察に関する下の文章中のア・イに入る語句の組合せとして最も適当なものを、のうちから一つ選べ。(4点)
節足動物の進化の過程で、遺伝子Yの働きが一回だけ変化したと考えたとき、遺伝子Yの働きが変化したのはで、ショウジョウバエとアルテミアの共通祖先Pでは、遺伝子Yは脚形成を抑制
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