2021年大学入試共通テスト「生物」(第2日程)第6問「聴覚」(配点12点)問題・解答・解説
【解説】
問1
内耳の一番下のうずまき管(蝸牛ともいう、蝸牛はカタツムリのこと)は聴覚。
一番上の互いに直交した3つの輪からなる半規管は回転覚を感知する。
3つの感覚器官の共通点は、リンパ液で満たされており、脳に信号を送る神経細胞に接続する感覚毛を持った有毛細胞を持つことである。
空気の振動である音波は耳殻(耳介)で集められ、外耳道を経て、鼓膜を振動させ、中耳の耳小骨、つち骨・きぬた骨・あぶみ骨という3つの骨をこの順に振動させ、それが内耳・うずまき管の入口である卵円窓を振動させる。
このように大学入試生物では、中学数学の基礎知識が前提とされることがある。以下、この分野の基礎知識を確認しておこう。
問3
正面からの音が両耳に同時に届き、真ん中のニューロンdを興奮させるのは本文の通りである。
一方、音が、左や右方向から聞こえた場合は以下のようになる。
音の入る角度が正面からはずれるほど左右の時間差は大きくなるので興奮するニューロンは両端側となる。その感知で音の方向までおおまかに感知できることが推測される。
さて、次に数値計算に入る。軸索での伝導速度とニューロン間との距離の関係がわかりにくい数値なので以下のようにまず換算して整理しよう。
すると1ニューロン(区画)間の伝導に0.025ミリ秒要すると換算すると、この問題は考えやすくなる。本文で「0.075ミリ秒後には、信号は点Xと点Yからそれぞれ0.3mm(3区画)離れたニューロンdに同時に到達」も0.025ミリ秒×3区画=0.075ミリ秒と納得できる。
問2の図が左側に音源があったが、問3では左耳への到達が先なので、音源は右側にあることに注意してほしい。
左右の到達時間差が0.05ミリ秒なので、0,05÷0.025=2区画分の差である。右側到達時、速い入力であった左側は既に2区画進んでいるのでcまで進んでいる。そしてcとgの真ん中に両者の伝導が同時に伝わるので、興奮場所はeとなる。
【解説者の朝倉の入試問題としての考察】
総合問題としては面白いが、生物入試としては、生物的な内容は問1のみ、問2・問3は数学的である。もちろん、生物の学問を進める上で数学は必要であり、それを示した意味はあるが、比重が数学に偏りすぎている。問2はなしにして、問3を問2にして、問3に感覚の左右差の統合による把握を、生物的に深めた問題を配置したほうがよかったのではないかと感じます。