2021年大学入試共通テスト「生物基礎」(第2日程)第3問「生態系・外来生物」(計16点)問題・解答・解説

問1

ある場所の植生が時間とともに移り変わり一定の方向性をもって変化していく現象を遷移(植生遷移)という。以下に陸上の裸地から始まる遷移の一例を描いた。


植生の変化によって環境も変化し、それがまた植生の変化を進める。たとえば、最初に生育するのは、風で種子が運ばれるなどして侵入する草本など先駆植物(pioneer plant)で、やがて日なたでの生育に適した陽樹が優占する林になる。陽樹など初期の森林で出現する樹木を先駆樹種という。先駆樹種の多い森林が形成されると、林床(林の地表部)に光が届きにくく、陽樹の芽生えは生育できないため、やがては、林床に届く弱い光のもとでも生育可能な陰樹におきかえられていく。陰樹林の林床では、もともと弱い光のもとでも生育可能な陰樹の芽生えは生育でき、陰樹林は安定する。このように、遷移の後期に現れる樹種を極相樹種といい、極相樹種が多い森林を極相林という。

陸上の裸地から始まる遷移を乾性遷移、湖沼から始まり湿原を経てその後は乾性遷移と同様の遷移となる遷移を湿性遷移という。これらは植物の種子などが含まれた土壌がない状態から始まる遷移で一次遷移という。これに対し、山火事・森林伐採などでできたギャップ(林床に光が届く場所)から始まる遷移は、以前の植生が作り出した土壌や種子、土壌動物などを引き継いで始まる遷移なので二次遷移という。二次遷移は植生が作り出した土壌や種子、土壌動物などを引き継ぐので一次遷移に比べて速く進行する。

シベリアの落葉樹林は陽樹の林であり、自然の山火事によって遷移の進行が妨げられることで維持されている。高木は林冠に達してからア(種子生産)を行うため、陽樹が林冠を占めた後、陰樹が林冠に到達する前に山火事が起きると陰樹が次の世代を残せない。ここでは、山火事後に出現する明るい裸地でイ(草本)や落葉樹の種子が発芽し、ウ(二次遷移)が始まる。

よって   (植物は発芽して緑葉ができた瞬間から光合成を始める。「高木が林冠に達してはじめて光合成を行う」ことはありえないので、アは光合成でなく種子生産。)

問2

以下が日本の極相林でどの植生になるかを示したものである。

西南日本の低地における極相林は常緑広葉樹の照葉樹林であるので、落葉広葉樹が維持されているのは、人間の樹木伐採などの影響で、林床が暗くならずに落葉広葉樹の芽生えの生育が継続できたと考えられる。よって人間が手を入れなくなれば、もともとの西南日本低地の極相林である照葉樹林になるはずである。農業における肥料となる元素はN(窒素)・P(リン)・K(カリウム)が多い。それを落ち葉から供給していた。このように人間の森林周辺でその産物を利用している環境全体を里山(さとやま)という。
さて落ち葉の持ち出しがなくなれば、その分の窒素が林床に残るので窒素量は増加する。よって

 

問3

日本の海岸近くは多くは上記のように照葉樹林・夏緑樹林が成立する群系で気候帯は暖温帯・冷温帯なので、まったく異なる植物群系のサバンナのように気温が高かったり、ツンドラや高山草原のように気温が低いことは考えられない。また土壌は海に流出しやすく、森林の林床のように土壌を形成するもととなる落ち葉などの腐食質も供給されない(×)。
川の流下での河口域や、その後の海の水の流れで運ばれてくる貧栄養の砂の供給によって、ハマヒルガオ・ハマボウフウなどその環境に適応した植生が形成される。よって、

↓参考 NPO法人の砂浜の植生のまとめ。
砂浜の植生(NPO法人 表浜ネットワーク)

問4
外来生物とは、人間の活動によって意図的に、あるいは意図されずに本来の生育場所から別の場所に移されて定着した生物である。
これに対してもともとその地域に生育してきた同種類の生物を在来生物という。外来種・在来種ということもある。

捕食性の生物であり、それ以外の生物を含まない。
×。セイヨウタンポポのような植物も外来生物である。
国外から移入された生物であり、同一国内の他地域から移入された生物を含まない。
×。外来生物には、国外からの他、同一国内の他地域からの移入のものもある。北海道にもともといなかったイノシシやトノサマガエルが本州から持ち込まれた。(アライグマも本州から北海道に持ち込まれた国内外来種である。さかのぼると、国外からアライグマは持ち込まれた外来生物であった。)
参考 札幌市HP「外来種に注意を」
移入先の生態系に大きな影響を及ぼす生物であり、移入先の在来生物に影響しない生物を含まない。
×生態系に大きな影響を与えなくても外来生物である。たとえば、シロツメクサ(クローバ)は生態系に大きな影響を与えていないが、もともとは外来生物である。
人間の活動によって移入された生物であり、自然現象に伴って移動した生物を含まない。→
  外来生物は人間の活動によって意図的に持ち込まれたものの他、意図せずに持ち込まれたものも含む。但し、自然現象による移動は含まない。
移入先に天敵がいない生物であり、移入先に天敵がいるため増殖が抑えられている生物を含まない。
移入先のなんらかの生物が天敵となり増殖が抑えられた場合でも外来生物である点は変わらない。→×
よって
★特定外来生物
2005年6月の外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)において、日本に移入された2000種以上の外来生物のうち、特に大きな影響を及ぼす生物のこと。カミツキガメやオオクチバスなど。飼育・栽培・輸入の原則禁止や、必要に応じて防除などが行われることがあります。

問5

オオクチバスの移入後、魚類全体の生物量(現存量)は、2000年には移入前の3分の2にまで減少した。
オオクチバスの移入後の生物量(現存量)の変化は、在来魚の種類によって異なった。
オオクチバスは、移入後に一次消費者になった。
オオクチバスの移入後に、魚類全体の生物量(現存量)が減少したが、在来魚の多様性は増加した。
オオクチバスの生物量(現存量)は、在来魚の生物量(現存量)の減少が全て捕食によるとしても、その減少量ほどには増えなかった。
オオクチバスの移入後、沼の生態系の栄養段階の数は減少した。
オオクチバスは、移入後に一次消費者になった。×
  →他の魚を捕食するので、二次消費者である。(また移入後に食性が変わることも考えにくい。)
オオクチバスの移入後、沼の生態系の栄養段階の数は減少した。×
  →栄養段階の数とは、食物連鎖で、生産者→一次消費者→二次消費者→三次消費者→・・・・が何段階まであるかという数である。オオクチバスは二次消費者であるが、もともと沼に三次消費者以上いたのかどうか、また仮に三次消費者以上がいた場合でもオオクチバスの移入によって、それがいなくなったとは考えにくい。
よって

この問題から、特定外来生物のオオクチバスが生態系の与える影響の大きさがわかると思います。

参考 環境省HP「オオクチバス」