2019年大学入試センター試験「生物」第2問(生殖と発生)解説

解答

(計18点)
[1]③(3点)
[2]②(4点)
[3]③(3点)
[4]④(4点)
[5]②
(3点)

解説

問1 Z茶、Z黒が両方存在した場合(Z茶Z黒)のみ、選択的不活性化で、茶毛・黒毛をもつことになる。

なお本設問ではX染色体上に載っている遺伝子をZと表記し、Z茶、Z黒があると表記しているが、煩雑さを避けるため、以下では

Z茶、Z黒を持っているX染色体をX茶、X黒と表記する。

以下卵細胞と精子の組み合わせの碁盤目表から1/4、25%ということがわかる。

よって[1](3点)

問2 取り出した三毛ネコの体細胞はX茶が不活性化した細胞とX黒が不活性化した細胞のどちらの可能性もありうる。

ただ、核移植の際に再び、受精卵の時と同様の初期の両遺伝子ともに不活性化していない状態に戻る。

したがってそこから再び次の現象が再び起きる。

 

三毛ネコになるし、黒毛・茶毛・白斑の位置はまた、前のネコとは異なる配置になるので、異なるまだら模様となる。

したがって、[2]②(4点)

★三毛猫に関する問題の追加説明

 

問3 実験考察の問題。実験1で「表皮細胞に隣接する葉肉細胞」と書いてあることに注目する。隣接する細胞から分泌されたタンパク質(ポリペプチド)によって、細胞の分化(どの遺伝子を発現するか)に影響を受けることがある。たとえば、カエル発生時の「誘導」現象で植物極側の細胞が分泌するノーダルタンパク質によって接触する細胞が中胚葉に分化していく「中胚葉誘導」もその例の1つである。

図3を見るとポリペプチドAがあると、気孔が増加するので、ポリペプチドAが気孔形成を促進していることがわかる。

それではそのA遺伝子が、実際に気孔が作られる場所である表皮細胞で発現しているかを調べてみると、まったく発現していない(DNAからmRNAの転写がおこっていない)。しかし「隣接する葉肉細胞」ではA遺伝子が多く転写されていることがわかる。したがってA遺伝子が葉肉細胞で転写・翻訳されてポリペプチドAが作られ、それが分泌され、それを受け止めた表皮細胞が気孔を作る孔辺細胞に多く変化したと考えることができる。

よって[3]③(3点)

問4 ポリペプチドAを作る遺伝子が発現している場合を[A]、作ることができない(欠く)場合を[a]、同様にBを作る遺伝子が発現している場合を[B]、作ることができない(欠く)場合を[b]とする。

野生型は両遺伝子が発現し、言及されていない遺伝子については、野生型と同様に発現していると考えるので、

野生型は[AB]、変異体aは[aB]、変異体bは[Ab]、変異体abは[ab]である。

(これは遺伝の表現型表記の暗黙の約束である。キイロショウジョウバエで黄色体色(A)・正常翅(B)が野生型で、黒体色(a)、痕跡翅(b)が変異型である。「野生型」「黒体色」「痕跡翅」「黒体色・痕跡翅」と表記された場合の表現型は、「野生型」は[AB]、「黒体色」は[aB](表記されていない翅は野生型と同じとみなす)、「痕跡翅」は[Ab](表記されていない体色は野生型と同じとみなす)、「黒体色・痕跡翅」は[ab]である。)

すると[A]がないと(つまり[a]であると)、気孔は著しく少ないので、[A]が前問で確認したように気孔の生成を促進する。その上で[A]の場合は

かさねてB遺伝子が働く野生型[AB]よりも、B遺伝子が働かない[Ab]のほうが、気孔生成が多いことから、BがAの気孔生成を抑制している、つまりAの働きを抑制していることがわかる。よって[4]④(4点)

問5 乾燥を防止し、過度な水分消失を防ぐように茎や葉の表面に存在している層はクチクラ層である。(形成層は茎の中で細胞分裂を継続している分裂組織)

根の先端近くにあり、細胞分裂を継続している根端分裂組織は、分裂した直後で細胞壁が薄く弱い組織なので、それが先端にあると根が土中を進む時に傷つきやすい。したがって「根冠」という分裂を停止した永久組織が根の先端に存在し「根端分裂組織」を保護している。(また根冠は重力を感知し、根の正の重力屈性にも関与する。) 根毛は根から側面に多数伸びて、水などの吸収表面積を増やしている表皮組織の一種で根端分裂組織を保護しているわけではない。また維管束は道管・師管など物質輸送に関わる管を含む構造である。よって[5]②(3点)

朝倉幹晴をフォローする