入試に出る地方自治4~2022年共通テスト「倫理、政治・経済」第5問(配点19点)問題・解答・解説~
2022年6月27日 船橋市議(無党派)、予備校講師
大学入試センター試験、共通テスト「倫理、政治・経済」ならびに「現代社会」で地方自治に関する出題が増加しています。住民に一番近い市区町村や都道府県のしくみについての理解が求められています。
2022年共通テスト「倫理、政治・経済」第5問(配点15点)問題・解答・解説を作りましたので、入試対策、学習にお役立てください。本設問を通じて、船橋市ほか、皆さんのお住いの市町村の地方自治に関心を持っていただけると幸いです。
参考 関連の過去出題の解答解説です。
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●入試に出る地方自治3~2019年大学入試センター「倫理、政治・経済」「政治・経済」地方自治問題・解答・解説(船橋市を例にした具体的解説)
●入試に出る地方自治5~2022年大学入試共通テスト「倫理、政治・経済」第7問(配点12点)問題・解答・解説
2022年共通テスト「倫理、政治・経済」第5問(配点19点)
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国の法制度や(a)地方自治に感心がある生徒Xと生徒Yは、自分たちが住むJ市のまちづくりの取組みについて調べている。
かつて(b)K寺の門前町として栄えたJ市には、多くの観光客が訪れており、K寺やJ市の重要な観光資源となっている。市の中心市街地は、駅からK寺へ至る表参道としての中央通りを中心に発展してきた。駅前には大型店舗が集まり、表参道には個人商店が軒を並べている。また、K寺の門前には空き家などをリノベーションした店舗やカフェが多数立地し、(c)地元の農産物を加工した食品を販売している。
生徒たちがJ市のWebページを調べたところ、市が「市街地活性化プラン」を策定し、次のような事業を展開していることがわかった。
生徒たちはとくに空き家などの活用に感心をもち、空き家や(d)民泊に関する(e)法律についても、(f)立法過程を含め、調べてみることにした。
問1 下線部aに関連して、生徒Yは、日本国憲法が保障している地方自治について調べ、次の文章のようにまとめた。文章中の空欄ア~ウに当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。(3点)
日本国憲法第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」としている。ここでいう地方自治の本旨は、団体自治と住民自治の原理で構成される。団体自治は、国から自立した団体が設立され、そこに十分な自治権が保障されなければならないとするア的要請を意味するものである。住民自治は、地域社会の政治が住民の意思に基づいて行われなければならないとするイ的要請を意味するものである。国から地方公共団体への権限や財源の移譲、そして国の地方公共団体に対する関与を法律で限定することなどは、直接的にはウの強化を意味するものということができる。
問2 下線部bに関連して、J市とK寺のかかわり合いに関心がある生徒Yは、「政治・経済」の授業で学習した政教分離原則のことを思い出し、政教分離原則に関する最高裁判所の判例について調べてみた。最高裁判所の判例に関する次の記述ア~ウのうち、正しいものはどれか。当てはまる記述をすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、のうちから一つ選べ。(3点)
ア 津地鎮祭訴訟の最高裁判決では、市が体育館の起工に際して神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行ったことは、憲法が禁止する宗教的活動にあたるとされた。
イ 愛媛玉ぐし料訴訟の最高裁判決では、県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出したことは、憲法が禁止する公金の支出にあたるとされた。
ウ 空知太(そらちぶと)神社訴訟の最高裁判決では、市が神社に市有地を無償で使用させていたことは、憲法が禁止する宗教団体に対する特権の付与にあたるとされた。
問3 下線部cに関心をもった生徒Yは、日本の農業に関する法制度の変遷について調べ、次の表を作成した。表中の空欄ア~エには、後の記述のいずれかが入る。表中の空欄ウに当てはまる記述として最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。(3点)
農業と工業の生産性の格差を縮小するため、米作から畜産や果樹などへの農業生産の選択的拡大がめざされることになった。
国民生活の安定向上のため、食料の安定供給の確保や農業の多面的機能の発揮がめざされることになった。
地主制の復活を防止するため、農地の所有、賃貸、販売に対して厳しい規制が設けられた。
農地の有効利用を促進するため、一般法人による農地の賃貸借に対する規制が緩和された。
問4 下線部dについて、生徒Xと生徒Yは次のような会話をしている。次の会話文中の空欄ア・イに当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
X:住宅宿泊事業法が制定されて、住宅を宿泊事業に用いる民泊が解禁されたと聞いたけど、うちのJ市も空き家を活用した民泊を推進しているらしいね。でも、同じく宿泊施設であるホテルや旅館の経営者の一部からは、経営への悪影響を懸念して、規制をすべきという声も出ているらしいよ。
Y:アを支持する考えからすれば、民泊がたくさんできると、利用者の選択肢が増え利便性が上がるだろうし、将来的には観光客の増加と地域経済の活性化につながって、いいことなんだけどね。
X:問題もあるんだよ。たとえば、閑静な住宅街やマンションの中に民泊ができたら、夜間の騒音とか、周辺住民とトラブルが生じることがあるよね。彼らの生活環境を守るための対策が必要じゃないかな。
Y:民泊の営業中に実際に周囲に迷惑をかけているなら個別に対処しなければならないね。でも、自身の所有する住宅で民泊を営むこと自体は財産権や営業の自由にもかかわることだし、利用者の選択肢を狭めてはいけないね。だから、住宅所有者が民泊事業に新たに参入ことを制限することはだめだよ。その意味で、イことには反対だよ。
ア規制強化
イ住宅街において民泊事業を始めることを地方議会が条例で禁止する
ア規制強化
イ夜間の激しい騒音を改善するよう民泊事業者に行政が命令する
ア規制緩和
イ住宅街において民泊事業を始めることを地方議会が条例で禁止する
ア規制緩和
イ夜間の激しい騒音を改善するよう民泊事業者に行政が命令する
問5 下線部eについて、生徒Xと生徒Yは、さらに民泊に関連する法律の内容を調べた上で、次のような会話をしている。次の会話文中の空欄ア~ウに当てはまる語句の組み合わせとして正しいものを、後ののうちから一つ選べ。(3点)
X:調べてみたら民泊を営むにも利用するにもいろんな法律がかかわるんだね。
Y:そうだね。まず民泊の解禁を定めた住宅宿泊事業法があるけど、ほかにも、利用料金を支払って民泊を利用する契約にはアが適用されるね。ちなみに、私人間の関係を規制するアは、公法か私法かという分類からすればイに該当するね。
X:また、民泊を営業する人は事業者だから、不当な勧誘による契約の取り消しを可能にしたり、消費者に一方的に不利な条項の無効を定めたりするウも関連するよ。
Y:一つの事項についてもさまざまな法律が重層的にかかわることが確認できたね。
ア民法 イ私法 ウ消費者契約法
ア民法 イ私法 ウ独占禁止法
ア民法 イ公法 ウ消費者契約法
ア民法 イ公法 ウ独占禁止法
ア刑法 イ私法 ウ消費者契約法
ア刑法 イ私法 ウ独占禁止法
ア刑法 イ私法 ウ消費者契約法
ア刑法 イ私法 ウ独占禁止法
問6 下線部について、生徒Xは「政治・経済」の教科書を読み、日本の立法過程について整理した。日本の立法過程に関する記述として誤っているものを、次ののうちから一つ選べ。(3点)
国会議員が予算を伴わない法律案を発議するには、衆議院では議員20人以上、参議院では議員10人以上の賛成を要する。
法律案が提出されると、原則として、関係する委員会に付託され委員会の審議を経てから本会議で審議されることになる。
参議院が衆議院の可決した法律案を受け取った後、60日以内に議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。
国会で可決された法律には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。