2021年、大学入試共通テスト「生物基礎」第3問B「感染症と生態系」(配点7点)問題・解答・解説

2021年7月27日(火)20時完成・発信 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

2021年大学入試共通テスト「生物基礎」第3問B「個体群」(配点計7点)の問題・解答・解説です。なお第3問Aは同じ第3問ですがテーマが別(バイオーム)であるため別に解答・解説を作ります。
2022年以降の共通テスト「生物基礎」を受験する人を含む大学入試「生物基礎」選択者、物理選択で大学に入り、大学で生物を学ぶ必要がでてきた方、生物学に関心のある市民の方々に、以下解答解説をお届けします。ご活用ください。入試問題は白黒ですが、イメージ補強のため一部カラー化しました。
 また、本設問は、新型コロナウイルス感染症が蔓延する中作られた問題であり、この設問を通じて感染症と免疫の理解が深くなるよううな問題です。ぜひ取り組んでみてください。

本解説は、オリンピック期間中の平日夜を活用して作成・公開しました。
●東京オリンピック開会にあたって(オリンピック期間中に朝倉ができる社会貢献は入試問題解答解説作成)(2021年7月22日(開会式前日)、船橋市議・予備校講師、朝倉幹晴)

●2021年、大学入試共通テスト「生物基礎」第3問B「個体群」(配点7点、Aの配点9点と合わせて第3問全体で16点配点)

アフリカのセレンゲティ国立公園には、草原と小規模な森林、そして、ウシ科のヌーを中心とする動物群から構成される生態系がある。この国立公園の周辺では、18世紀から畜産業が始まり、同時に牛疫(ぎゅうえき)という致死率の高い病気が持ち込まれた。牛疫は牛疫ウイルスが原因であり、高密度でウシが飼育されている環境では感染が続くため、ウイルスが継続的に存在する。そのため、家畜ウシだけでなく、国立公園のヌーにも感染し、大量死が頻発していた。1950年代に、一度の接種で、生涯、牛疫に対して抵抗性がつく効果的なワクチンが開発された。このワクチンを、1950年代後半に、国立公園の周辺の家畜ウシに集中的に接種することによって。家畜ウシだけではなく、ヌーにも牛疫が蔓延(まんえん)することはなくなり、牛疫はこの地域から(a)根絶された。そのため、図4のように(b)ヌーの個体数は1960以降急増した。図4には、牛疫に対する抵抗性をもつヌーの割合も示している。

問3 下線部(a)に関連して、ワクチンの世界的な普及によって、2001年以降、牛疫の発生は確認されておらず、2011年には国際機関によって根絶が宣言された。牛疫を根絶した仕組みとして最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。

全てのウシ科動物が、牛疫に対する抵抗性をもつようになった。
ワクチンの接種によって、牛疫に対する抵抗性をもつ家畜ウシが増えたため、ウイルスの継続的な感染や増殖ができなくなった。
ワクチンの接種によって、牛疫に対する抵抗性がウシ科動物の子孫にも引き継がれるようになった。
接種したワクチンが、ウイルスを無毒化した。

問5 下線部(b)に関連して、図4のようにヌーの個体数が増加したため、餌となる草本の現存量は減少し、乾季に発生する野火が広がりにくくなった。また、野火は樹木を焼失させるため、森林面積にも影響していることが分かっている。牛疫は根絶が宣言されているが、もし何らかの理由で、牛疫がセレンゲティ国立公園において再び蔓延した場合、どのような状況になると予測されるか。次の記述a~dのうち、合理的な推論を過不足なく含むものを、下ののうちから一つ選べ。
a.ヌーの個体数は減少しない。
b.草本の現存量は減少する。
c.野火の延焼面積は増加する。
d.森林面積は減少する。

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