2021年大学入試共通テスト「生物」(第2日程)第3問「生態ピラミッド」(配点14点)問題・解答・解説

【解説】

本設問は、サンゴ礁の生態系での小型底生魚と大型魚の比較である。
まず、この種の問題に慣れるため、また本設問の理解の補助ともなるので、センター試験時代からよく出題されている地球全体における、森林生態系と外洋生態系の比較の捉え方を説明しよう。

【地球全体の森林生態系と外洋生態系の比較】

これは過去にセンター試験で出題された表を簡略化して示したものである。実際に入試で与えられる数値は のみであり、赤字の部分は自分で計算し、単位面積あたりの森林と外洋の生産者の現存量、純生産量(ほぼ光合成量に比例)を求める。森林の生産者の現存量は「樹木」なので非常に多く、外洋の生産者は海水中に浮遊する植物プランクトンなので少なく、その比は約9000:1にもる。しかし、純生産量になると比は2:1となり、植物プランクトンが現存量に比較すると非常に多く純生産量になっている、つまり光合成し個体を増やしていることが推察できる。現存量は少ないが純生産量は多いというのはどう説明したらよいだろうか?
まず、安定した生態系では現存量は毎年同じなので、ある年の新しい純生産量と同じ量の生産者が失われているはずである。それを意識して図に描くと以下のようになる。

つまり、外洋の生態系では植物プランクトンが光合成・増殖すると、すぐに動物プランクトンや魚に被食されるため、現存量は小さくなる。現存量に比して実際の純生産量が大きい。

【生態ピラミッド】

食物連鎖における生産者(植物など)→一次消費者(植食性動物)→二次消費者の物質やエネルギー量を積みあげた図を生態ピラミッドという。生産者の被食量は一次消費者の摂食量となる。摂食したもののうち、糞などに排出される不消化排出量を引いたものが、動物がいったん体内に同化した同化量となり、更に生命活動のために使った呼吸量を引いたものを「生産量」という。植物における純生産量に相当するもので、生産者でなく消費者である動物においても「生産量」という用語を使うので注意してほしい。下はエネルギーピラミッドで、必ずすそ野が広い形となるが、この他にも現存量・個体数に注目したピラミッドもあり、その場合は逆転(下が小さい)こともある。

 

さて、このサンゴ礁の生態系の値を図1から読み取り、森林・外洋生態系で示したように示すと以下のようになる。

まず、「外洋・森林生態系比較」の図で示した外洋での「枯死量」とは被食もされず浮遊して、生態系に流出する有機物を示すが量的に少ないので無視している。
「外洋・森林生態系比較」では、生態系は安定していて成長しないことを前提としていた。この図では「成長量」があるが、毎年同じサンゴ礁の面積内に小型底生魚や大型魚が増え続けるのはありえないので、サンゴ礁の単位面積あたりの現存量は不変であり、この成長量は、サンゴ礁で育まれ、周辺の海に移動していく個体と考えられる。被食量と成長量分を合わせたものが、毎年の「生産量」となっているはずである。
生産量=被食量+成長量で計算し、図で赤で示した。
小型底生魚の被食量1300が、
大型魚の生産量1300(=大型魚の被食量1000+成長量300)と一致していることが確認できる。

問1

図1で、小型底生魚のほうが大きくなっているのは年間被食量(ア)のみであり、図から外洋生態系における植物プランクトンと同傾向で、小型底生魚は次々に被食されている、つまり死亡している数が多く(入れ替わりが速く)、死亡率は高い(イ)と考えられる。よって

問2

年間生産量/現存量の計算は、図で示した計算(〇年に1回入れ替わる)と分子分母が逆だけである。

小型底生魚 1350/200=6.75=675%(エ)
大型魚   1300/3200=0.41=41%
また大型魚の生産量は、上にも書いた通り

大型魚の生産量=大型魚の被食量+成長量=1000+300=1300(ウ)

問3
問2で計算した通り、生産量/現存量 小型底生魚 675%>大型魚41%

小型底生魚では、大型魚に比べ、現存量あたりの生産量はオ(大きい)

そのため、生態ピラミッドは、低次の栄養段階の現存量がカ(小さい、逆転した)構造を示す。現存量では逆転しているのは、小型底生魚は次々に生産し次々に食べられていっているためであり、エネルギー量(生産量)で比較すると逆転はしていない。
よって、